人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。
今回は、「企業文化への定着のための取り組み」について解説したいと思います。
本題に入る前に、そもそも企業文化とは何でしょう?皆さんは、明確に説明できますか?
企業文化と組織風土は違うもの?同じもの?
一見言葉遊びのようですが、それぞれ性質が違うので、異なる言葉が割り当てられています。
定義してみるとこんな感じでしょうか?
企業文化:企業・組織と従業員の間に、意識的、あるいは無意識的に共有されている独自の価値観や行動規規範
組織風土:組織の内部に根付いた独自性によって生まれ、培われた暗黙のルールや習慣
組織風土を従業員が捉えている様を、「社風」と呼ぶこともあります。
「うちはのんびりした社風だ」などと表現したりすることがありますよね。
わかりにくいので、人に例えてみましょう。
文化は、その人が学習や経験などを通じて身に着いた知識や哲学や行動様式、風土は、その人の性格と捉えるとわかりやすいのではと思います。
いかがでしょう?少しはイメージしやすくなったのではないでしょうか?
文化と風土の大きな違いは、「変化のしやすさ」にあります。
組織風土は、その人が本来持っている性格と同じで、変わらないとは言いませんが、簡単には変化しません。
一方、企業文化は「何を目指すのか」で大きく変わるものです。
人材版伊藤レポートでは、人的資本経営においては、企業文化の醸成が企業価値向上に不可欠であると提唱されています。
では、具体的に何をしたらよいのか?
人材版伊藤レポートでは、以下の5つの取り組みを示しています。
1)経営戦略との連動
企業文化は、経営戦略と密接に連携する必要があります。目指すべきビジネスモデルや経営戦略と、現時点の人材や人材戦略とのギャップを把握し、人材戦略が実行されるプロセスの中で、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着させていきます。
2)CEO・CHROのリーダーシップ
経営陣、特にCEOとCHRO(最高人事責任者)が、企業文化を体現し、社員と直接対話することで、社員の意識改革を促します。
3)人材マネジメントの仕組み
任用・昇格: 企業文化を体現する人材を選抜し、育成・登用します。
報酬・表彰: 企業文化に沿った行動や成果を評価し、適切に報酬や表彰を行います。
4)コミュニケーションの活性化
対話: 経営陣と社員の間で、定期的な対話やフィードバックの場を設けます。
情報共有: 社内の情報を共有し、透明性を高めます。
5)人材育成
研修: 企業文化を理解し、体現できる人材を育成するための研修を実施します。
また、企業文化の醸成に向けては、継続性や現場を巻き込むことに留意する必要があります。
企業文化の醸成は、一朝一夕にできるものではありません。継続的な取り組みが重要です。
経営層だけでなく、現場の社員も巻き込んで、企業文化を共有・体現していくことが大切です。
次回は、「動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用」について解説したいと思います。
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