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執筆者の写真熊澤剛

人的資本経営とは何か?(その8)



人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。


今回は、「リスキル・学び直しのための取り組み」について解説したいと思います。


一時はブームとなったリスキルですが、なぜ人的資本経営の実現に必要なのでしょう?

大きくは以下の三点によるものと考えられます。


1.変化への対応

・技術革新や市場の変化が激しい現代において、社員のスキルを常に最新の状態に保つことが不可欠です。


2.イノベーションの創出

・新しいスキルを習得することで、社員は新しいアイデアを生み出し、イノベーションを創出することができます。


3.従業員のエンゲージメントの向上

・学習機会を提供することで、社員のモチベーションを高め、企業への愛着を深めることができます。


では、リスキル・学び直しのために、企業には具体的にどのような取り組みが必要となるのでしょうか?

ここでは4つの重要な取り組みについて、いくつかの事例をご紹介します。


1.キャリアパス設計と個別学習計画の策定

・個々のキャリア目標設定: 一人ひとりのキャリア目標を明確にし、それに合わせた学習計画を立てる。

・スキルギャップ分析: 現在のスキルと将来必要なスキルとのギャップを分析し、不足しているスキルを特定する。

・個別学習プランの作成: 各社員に合わせた学習プランを作成し、必要な学習資源やサポートを提供する。


2.多様な学習機会の提供

・社内研修: 基礎的なスキルから専門的なスキルまで、幅広いテーマの研修を提供する。

・外部研修: 大学、専門学校、企業研修機関などの外部研修への参加を支援する。

・オンライン学習: eラーニングプラットフォームを活用し、いつでもどこでも学習できるようにする。

・OJT: 経験豊富な社員によるOJTを通じて、実践的なスキルを習得させる。

・メンター制度: 経験豊富な社員がメンターとなり、新入社員や若手社員の成長を支援する。


3.学習環境の整備

・学習時間確保: 学習時間を確保するための制度設計(フレックスタイム制、リモートワークなど)を行う。

・学習費用の補助: 資格取得や外部研修費用の一部を補助する。

・学習コミュニティの形成: 社内で学習コミュニティを形成し、社員同士が学び合い、モチベーションを高め合う環境を作る。


4.評価制度の見直し

・学習意欲を評価: 学習意欲や成長意欲を評価に組み込む。

・スキルベースの評価: スキルベースの評価制度を導入し、社員のスキル向上を促す。

・キャリアパスと連動: 学習成果をキャリアパスに結びつけ、社員のモチベーションを高める。


こうしたリスキル・学び直しを成功させるためのポイントは、以下の4点が挙げられます。


1.トップマネジメントのコミットメント

・トップがリスキルの重要性を認識し、積極的に支援することが不可欠です。


2.全社員の参加

・全社員がリスキルに取り組むことができるような環境を整備します。


3.柔軟な制度設計

・時代や個人の変化に対応できる柔軟な制度設計を行います。


4.効果測定と改善

・学習効果を測定し、制度を継続的に改善していきます。


人的資本経営において、リスキル・学び直しは企業の持続的な成長に不可欠な要素です。

企業は、社員一人ひとりのキャリア目標を支援し、多様な学習機会を提供することで、社員の能力開発を促進し、ひいては企業全体の競争力強化に繋げることができるのです。


次回は、「社員エンゲージメントを高めるための取り組み」について解説したいと思います。

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